「九十九」 監督:森田修平

「もの」の実在感を表現するCGにこだわりました — 森田修平

「ものに魂が宿る」というテーマは非常に日本的な考え方です。以前からそんなテーマにこだわって企画を動かしていて、造形作家の岸啓介さんの絵本の雰囲気にも注目していました。「日本むかしばなし」みたいな作品へのあこがれもあったので、立体の得意な岸さんに妖怪ネタのプロットやイメージイラストをいくつかお願いし、そこからシンプルなストーリーを組み立てていきました。妖怪というと戦うとか逃げるとか、どうしてもそんなお話になりがちです。でも、それとは違った角度で考えるうちに、また別の「妖怪らしさ」にピピッと来た瞬間があったんです。それからは、画も自然に浮かんできました。

「付喪神(つくもがみ)」とは時が経過した「もの」に何かが宿った存在で、「九十九」は百の一歩手前の「長い」「多い」という意味です。なので「もの」の表現としては「実在感」に挑戦したいなと。着物や物体の質感や立体感を意識しつつ、同時に絵としての主線も活かして柄も入りというテイストで、“チン”とか“ガチャコチョ”とか“コトコトコト”って音がしそうな感じがキャラクターに出れば面白いだろうなと。最後に出てくる妖怪もそんな「もの」の固まりで、かなり複雑そうに見えますが、僕たちのやり方だと比較的簡単にできてしまうんです(笑)。20種類くらいのものを貼りつけてますが、3DCGだとレイアウトと角度を変えれば違う風に見えるので、非常に好きですね。

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