「九十九」 監督:森田修平

和風の色は意図したというよりは、柄を重視した結果です。デザイナーに柄を依頼して着彩して貼りこむ方法は、ものすごくお金がかかるんですよ(笑)。たまたまうちには小さい子どもがいるので、買ってあった千代紙を見て「これだ!」と。肌は肌色、紺色のものは紺色となるべく加工せずに使える色で人形にも使われている伝統の柄の千代紙を選び、予算ギリギリまでそろえました。もともと日本の赤や緑を美しい色だと思っていますし、それを貼りこんだ結果、自然と配色も和風になったわけです。そしたら、男の顔にいつの間にか「ほくろ」があるんですよ。デザインにもモデルにもないので不思議に思っていたら、千代紙の汚れをたまたまひろったのが、実にいいところに出ていたので「これ消すんじゃねー!」と(笑)。そんな偶然性も面白かったです。

実制作はデビュー作の『カクレンボ』に近い少人数で、自分とキャラクターデザインの桟敷大祐と、CGI監督の坂本隆輔と『FREEDOM』のCGI監督だった佐藤広大の4人がほぼメインスタッフです。あとは匂いの部分などエフェクト系の作画を堀内博之さん一人、それに美術の中村豪希さんと岸さんと、本当にミニマムでした。自分は若手なので意気込み重視です。物量が多いから厳しい部分もありつつ、少人数なりに臨機応変に対応して楽しくやっていました。音に関しても、山寺宏一さんには1分近い長いアクビを、うまくリズム合わせつつ演じていただきましたし、音楽の北里玲二さんとサウンドデザインの笠松広司さんも長年のお付き合いですが、ホントに意気投合という感じで、自分がこだわっている音楽でもSEでもない音を、実にうまく表現してくれて、実在感がぐっと上がりました。

英題の『POSSESSIONS』が「占有する」「憑りつく」という意味で、いい感じですし、セリフに頼らずとも伝わる要素が多いせいか、海外の映画祭でも良い反応をいただいています。ちょっとこそばゆい位置にいる妖怪にしましたので、5回、10回と繰りかえし観返してもらえればジワジワ来て、どんどん面白くなってくるかと。そんな風に何度も楽しんでいただけたら、嬉しいです。

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