「GAMBO」 監督:安藤裕章

目をそらすような、それでも目が離せないギリギリの緊張感 — 安藤裕章

『火要鎮』の演出を終えた後に、石井克人さんの企画書をもとに監督を担当することになりました。その企画書には石井さんのイメージイラストで「鬼vs熊」というプロレスファイト的な枠組みに女の子がいるというハイライトシーンが描かれていて、これが実に強烈な絵なんです。それをどうアニメーションにしていこうかというところから始まりました。

これは実に石井さんらしいバイオレンスの話なんです。人と人との間には暴力で強いたり強いられたりする関係が根っこにある。他者にすがることも、結局は暴力から逃れられない。それが描かれてるのではないかなと。「鬼」とは「外からの暴力」ですし、「熊」はそれに対する「内からの暴力」に相当します。その象徴的なふたつの暴力のぶつかり合いの話だという意味づけを考えました。石井さんは『GAMBO』というタイトルを「音の響き」で決めたそうですが、自分は「少女の破壊願望」という意味もふくめています。

「鬼」と「熊」の異形は石井さんのイラストをベースに膨らませて、人物のキャラクター原案は貞本義行さんにお願いすることことになり、短時間でしたが予想以上の的確で魅力的なキャラを生み出してもらえました。特に女の子はかわいらしくも生々しさを持ち、『エヴァンゲリオン』や『おおかみこどもの雨と雪』とも雰囲気の違うデザインになったと思います。貞本さんは時代ものに詳しく、日本刀に関してもいろいろと教えてもらいました。3Dキャラクターデザインの監修、動きの監修は作画監督の芳垣祐介さんですが、それも貞本さんの推薦によるものです。芳垣さんのテイストも加わって、よりかわいい印象がのこったと思います。

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