「GAMBO」 監督:安藤裕章

今回の舞台となった最上地方には友人がいたり、制作デスクが新庄の出身だったりして、実際に現地に行って取材もしました。曇りがちなのですが森は不思議な澄んだ感じで神秘的な雰囲気がありました。新庄の劇団『東北幻野』さんには仮プレスコのような形で、方言そのままの声を参考に収録させてもらっています。

美術監督は『火要鎮』と同じ本間禎章さんですが、戦国時代ということもあり、ハイコントラストでフィルムの銀残しをしたようなクラシカルで荒れた雰囲気をねらっていただきました。本間さんに注文は出してはいなかったのですが、上げていただいた美術ボードは学生のころより好きだったアンドリュー・ワイエスという画家の日差しの感じにも似たハイコントラスト感がバシッと出ているんですね。これには感動しました。本間さんからは「このころの夜空の星はもっと多かったはずだ」など、いろんな点で演出的な提案もいただいています。

今回、映像としてねらったのは、絵画的な雰囲気のままアニメーションとして動かすことです。自分の場合、その目的のためにCGはとても身近であり重要な道具です。CGI監督の小久保将志さんは『スチームボーイ』からのつき合いで、そうした意図をよく理解した画づくりのできる仲間です。それと坂本隆輔さんという若手のスーパーCGアニメーターが、バトルの部分を全面的に担当しています。彼は森田修平さんのもとで育ってきた人材ですし、やはり大友克洋さんの存在を中心に集まってきていると言え、サンライズ荻窪スタジオは人に恵まれたスタジオだと思います。

そして注目してほしいのは、短いながらもそこにただよう緊張感の部分です。石井さんの作品はいつも暴力表現が際どいラインにあって、「もう観てられない」という部分と、心をわしづかみにされて目がそらせない部分が縫いあわせたように、うまくミックスされていると思います。そんなギリギリの緊張感を楽しんでいただければと。そこで「暴力的だ」と否定されるのもいいし、肯定的にとらえられるのもいい。まずは観ていただいて、何らか心に残る作品になればと思っています。

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