「武器よさらば」 監督:カトキハジメ

最高のスタッフが結集して、大友克洋原作の衝撃を現在に — カトキハジメ

大友克洋さんと初めてお会いしたときに、「そんなに好きなら、君が『武器よさらば』の監督をやったらいい」という話になりまして、これは運というか縁だなと思って監督をすることにしました。

30年前、「AKIRA」よりも前に発表された大友さんの原作は、僕らの世代には忘れられない衝撃の作品で、それは後のさまざまな作品が「武器よさらば」のアイディアを引用してることからも明らかです。あの頃、渋めの作品が多かった大友さんが、いきなりエンタメ志向でSFアクションを描かれた。それだけでもすごいのに、プロテクションスーツの表現で「着る強化服」に一種の結論めいたものを出してしまったわけです。それまでパワードスーツ(PS)と言えば『機動戦士ガンダム』も参考にしたハインラインの小説『宇宙の戦士』でして、その挿絵でスタジオぬえが示した戦車的な硬くて重いタイプのPSのコンセプトがあったのみで(これも革命だったのですが割愛します)、アニメやコミックといったビジュアルでは、まだ誰もPSをちゃんと描いたことが無い時代だった。でも『武器よさらば』では『宇宙の戦士』とは異なる発想の、防弾チョッキを進化させたようなしなやかなスーツの系譜をいきなり作り出し、描写した。これはものすごいリアリズムと先見性だった訳です。今の若い世代にも僕らのあの衝撃を味わってほしいし、そこへいかに到達するかが最大のミッションでした。

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